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練習しない理由

2010.10.21.09:00

私は十代の頃からピアノを教えています。

音大に在学中、近所の子が習いにやってきて
その紹介、そのまた紹介で、、、と人数が増え、気づけば
私の部屋は小さな音楽教室となりました。

あれから22年。。。

最近になって、生徒が練習しない本当の理由がわかりました。

レッスンを始めた頃は、お母さんたちから「うちの子が練習しなくて」という
お言葉をたくさんたくさん頂きましたが
ここ10年ぐらいは、比較的よく練習する子が増え
そのお言葉を頂く回数も減少傾向にありました。

そしてここ5年ぐらいで、さらに減ってきて
はりきって練習してくる子の数の方が圧倒的に多くなったのですが
それでも「練習しない子」がいなくなることはありませんでした。

やっぱり何人かは「もうちょっと練習してこようね」
「いつだったら練習できそうかな」なんて話をしなければ
ならない子がいたのでした。

なんでなんだろう。毎週毎週考えました。

曲が嫌いだった?
説明がたりなかった?
曲が難しすぎた?
曲にあきた?
お家の環境の問題?
習い事が多いのかな?
宿題が多すぎた?

考えることで、その場の効果はあがるものの本質的な解決には
至りませんでした。

しかし、最近その理由がわかりました。

問題は身体にありました。

身体の勉強をはじめてから、
腕は快適か?
指は快適か?
身体全体は快適か?
音はよく聞こえるか?
手の感覚は鋭敏か?
コントロールはうまくできているか?

という本人の身体の快適さにフォーカスしてレッスンするようになったら
いつの間にか「練習しなさい」と言わなければならない
シーンがどんどん減っていきました。

それは緩やかな変化だったので、はじめは気づきませんでしたが
なんだか、みんなが少しずつ練習するようになったのでした。

音が読めなくて弾いてこなかった子も、
実は弾いている時の音の聞こえが悪いので
音符と実際の音が自分の中で一致していなかっただけで
音の聞こえがよくなるとともに音を読む力もついてきて
練習するようになりました。

そして気づけば「うちの子が練習しなくて」という悩みを
お母さんに打ち明けられることがなくなりました。

考えたら、身体の動きが快適じゃなかったら
練習するのに腰が重くなるのも当然。
でも、大抵の子は(大人だって)何で腰が重いのかわからない。
そして「練習しなければいけない」のに「練習しない」ことに対する
罪悪感だけが募る。

そしてレッスンでは「もっと頑張れ」と言われる。ひどい話です。
(ああ、、ごめんなさい)

しかし、よく考えればこんなに明白な「身体の快適さと練習の因果関係」
なのに、私の中では、それはなんとなくぼんやり認識されていただけでした。

それをはっきりと教えてくれたのは中学生のMちゃんでした。

みんながどんどん弾いてくるようになってくる中
Mちゃんの練習だけは、もう一歩でした。

ご両親がおおらかなので、「練習しなくて」という
申告はないものの、家での練習がうまくいっているとは
思えない状況でした。

彼女は身体の緊張が普通よりも強くて、とにかく指が動きづらい子でした。
彼女が小学生のとき、練習をあまりしてこないので
私はよく彼女と話あいをしました。

一日のスケジュールをかいて、いつなら練習できるか考えたり
練習を忘れないためには、どうしたらいいか考えたり。

でも、成果はあがりませんでした。

彼女が小学校を卒業する頃から、私が身体のことに注目して
ピアノを教えるようになったところで、
指がどんどん動くようになりました。

そこでちょうど発表会があったので、もともとまじめな彼女は
一生懸命練習をしてきて
テキストも一気に前に進みました。

しかしながら、発表会が終わるやいなや
家での練習量は今ひとつの状態に戻りました。

発表会のときは頑張っていたのになあ。。
なんでかなあ。。

そこで、よく観察してみると身体の動きの中に快適でない部分が
まだたくさんあることに気づきました。

私は聞いてみました。
「ねえ。ピアノ弾くのしんどい?」

彼女は「うん。。少し。。」と答えました。

そこではっきりわかりました。
彼女がピアノを弾いてこないのは、身体が快適じゃないからだと。

考えてみたら、こんなにあちこちギシギシと力がはいったまま
弾いて楽しいはずがない。
なんで、こんな簡単なことに気づかなかったのだろう。

毎週、前回よりも弾くのが楽になったか
家でひく気分になったかどうか。。を確認しながらレッスンしました。

「忙しくて、、」とか弾けなかった理由がかえってきたときは
弾く気分にならなかったと私は判断しました。

そうやって状況を確認しながら
彼女の身体の動きを徹底検証して、つい先日、かなりスムーズに動くようになった
ところで、やっぱり彼女は練習をするようになりました。

しかも練習するぞ!という意気込みもなく
なんだか弾いてみたくなった、、、というような感じで。

いつもはレッスンの直前にチョコチョコっと弾いて終わりということもよくあったのに
今回はレッスンの翌日に10回弾き、数日後に5回弾き、レッスン前日に10回弾き、、
ということで、、今までの彼女からしたら、すばらしい進歩です。

ピアノを習ったことがある人ならわかると思いますが
レッスンの翌日って、弾くのが楽しいときじゃないと練習しないものですよね。

やり過ごすレッスンの場合、翌日ってたいてい気がぬけて弾かない。

だから誰にも何も言われず翌日10回はすごいことです。

そうか。やっぱりそうだったか。。。

考えてみれば「身体の動きが快適じゃないから弾く気がしない」というのは
とても自然なこと。

思い至らなかった方が不思議なぐらい。

22年間なにやってきたんだ、私~、、、。

生徒に何か問題が起きたとき、そこには教える側にとっての
大きな成長のチャンスがあるのだと実感しました。

こうやって、教師は生徒たちに育ててもらうものなのですね。
この22年、私に関わってくれた生徒のみなさんに感謝
したいと思います。

私を育ててくれてありがとう。

みなさんに教えてもらったことをいかして
これからもどんどん成長していきたいと思います。
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篠原みな子

Author:篠原みな子
作曲・編曲家/ピアニスト
2006/11/11にファーストアルバム「Whispers of Fairies」をリリース

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